アフィリエイトカンファレンス

第11回アフィリエイト・カンファレンスレポート(2012年3月17日)

第11回アフィリエイト・カンファレンスの会場は、東池袋駅直結のビルにある「あうるすぽっと」。
あいにくの雨でしたが駅から濡れることなく入れる会場でした。
会費無料で開催された今回は、会場が少し小さめだったため、あっという間に申込み終了。
出席を希望しながら参加できなかった方も多かったようです。
ただ今回もUsteramでの中継と、Twitterでのつぶやき(ハッシュタグは#AFFCON2012)が、会場へ来られない方たちにも、リアルタイムでカンファレンスの内容を伝えました。
当日の中継を見ることができなかった皆さんにも、できるだけ第11回アフィリエイト・カンファレンスの内容をお伝えすべく、レポートします。

◇主催 NPO法人アフィリエイトマーケティング協会

◇協賛
【ゴールドスポンサー】
インタセクト・コミュニケーションズ株式会社

【シルバースポンサー】
アフィリエイトB
プエラリアプラザ
通信教育の「がくぶん総合センター」
森下仁丹健康美容通販「仁丹堂」
ニッセンオンライン
ベルメゾンネット
株式会社ゼタセグメント

【後援】
日本アフィリエイト・サービス協会(JASK)

◇開催日時 2012年3月17日(土)14:00〜16:50
◇開催場所 あうるすぽっと

司会は協会副理事長の猪鼻が務め、同じく副理事長の森本が挨拶と開会の宣言をしました。

開会の挨拶
協会 副理事長 森本 光昭

アフィリエイト市場は、2010年に大台の1,000億円を突破し、今も堅調に拡大傾向にあります。
スマートフォン、ソーシャル、アドネットワーク、O2O(Online to Offline)などは、かなり浸透してきました。
そして、ここ数年の傾向は「ネットでは売りにくい」と思われていた新商材が、注目を集めていることです。

たとえば、衣料品や靴などの試着が必要と思われていた商材や、日用品などの単価が低い商材が代表的です。
さらに、法律や制度の規制緩和という流れも見逃せません。
「健康食品や医薬品など」は、特に注目されている商材の一つです。
ただし、法律や制度の動向もしっかりと理解しておく必要も出てきます。
この点が、他の商材と大きく異なる点です。

そこで、今回の講演のテーマを「健康食品や医薬品に関わる薬事法対応」に設定しました。
そして、急速に普及するスマートフォン対応を、もう一つのテーマにしました。
最後は、恒例の開会宣言で締めくくりました。

【第一部】 アフィリエイト・ガラパゴス

日経デジタル・マーケティング
副編集長 杉本 昭彦 様

杉本氏はアフィリエイトを含めたネットのマーケティングを扱う雑誌「日経デジタルマーケティング」の副編集長であるのみならず、かつては日本経済新聞社の記者として、協会 副理事長の小林を取材してアフィリエイト記事を書かれたこともあるなど、一歩離れたところから、アフィリエイトを長年見て来られた方です。

アフィリエイトはガラパゴス?

「日経デジタル・マーケティング」とご自身の紹介の後、まず1つのグラフを示し、「何のグラフだと思いますか?」と会場に問いを投げかけました。
答えは「アフィリエイトへの注目度の変化」。

日経3紙に載った「アフィリエイト」という言葉を含む記事の掲載件数の推移です。
急激に注目を集めた「アフィリエイト」に対する関心のピークは2006年。
ASPの上場が重なり、ネット業界と言えばアフィリエイトというくらいに注目を集めました。
その後はひたすら減り続け、2011年の記事件数は2004年並みにまで減っています。
しかし市場は盛下がっているのかというと、そんなことはなく、ASPはEC市場と同ペースで売り上げ高を伸ばしています。
人知れず進化、成長しているアフィリエイトはガラパゴスのようです。
ちなみに、ガラパゴス諸島は、各大陸と隔絶された地で、天敵になるような大型の陸棲哺乳類が存在しないことから、独自の進化を遂げた固有種が多く存在することで知られています。
アフィリエイトの市場は成長していますが、進化はどうなんでしょうか?

急速に進化するデジタルマーケティング:ハンバーガーをネットで売る「O2O」

たとえば、ハンバーガーをネットで売る「O2O」。
「O2O」とは「Online to Offline」、ネットの情報を契機に、リアル店舗の消費を促進するマーケティング手法です。

元祖的な存在は日本マクドナルドの「見せるクーポン」やぐるなびのクーポンで、スマホ普及によって多様化しています。
ニューヨークの「4food」というハンバーガーショップは、O2O戦略で成功した店として知られています。
バンズや中に挟む具の種類、ソースなどを指定してオーダーメイドできるハンバーガーショップです。
その組み合わせは1億4,000万通りもあります。
自分がオーダーメイドしたハンバーガーメニューには自分で名前をつけることができます。

店にはiPadが置かれていて、注文する際には、そのiPadまたは自分が持ち込んだネット端末で、同社のサイトにアクセスして注文します。
すると、カウンターに注文が飛ぶと同時に、4foodのサイトの「Trending Burgers」の欄に、注文時に自分が付けたバーガー名が表示される仕組みです。

他の人は、その名前を指定することで、同じバーガーを簡単に注文することができます。
TwitterやFacebookなどのソーシャルメディアを活用して、自分のメニューを広め、それを見た他人がそのメニューを注文すると、「4food$」(ポイント)がもらえます。

カウンターの上部に設置されたディスプレイやサイトには「Top Sellers」のランキングが表示されていて、1位の顧客オリジナル商品は1200回以上の販売数を誇っています。

店に入るだけでポイントが貯まるアプリ「スマポ」があります。
街中でスマポを起動すると、スマポ対応 の店舗が、距離の近い順に一覧表示されます。
それを見て、近くの対応店舗に入るとアプリ画面に「Tap」ボタンが自動的に表示されるので、そのボタンを押せばスマポ のポイントがもらえます。
店によって異なりますが、10〜30ポイント(1ポイントは1円相当)が一般的。
現在はiPhoneアプリ、Android用のアプリが提供されています。

導入企業のスマポ利用料は原則、成果報酬型で、固定費や多額の初期導入費はかかりません。
決められた額を払っても何人の集客に結びつくか分からないチラシやフリーペーパーとは異なります。

導入企業のメリットは単なる集客だけではありません。
ECサイトのようなデータ入手により、店頭マーケティングの最適化が図れます。
ECサイトなら、サイトへの来訪者数や来訪頻度、購入数や購入者属性、来訪者に対する購入者の比率といった指標を基に分析を行い、サイトを改善し、売り上げを増やしていくことができます。

たとえば来訪者に対する購入者の比率、いわゆるコンバージョン率が1%であれば、それを2%に上げることで顧客獲得単価は2分の1に下げられます。
しかし、これまではリアルの店舗ではこうした改善への取り組みが困難でした。そ
もそも来店者数が精緻に把握できなかったからです。
スマポの利用者が今後増えれば、来店者数の増減傾向が分かります。
また性別・年代比、来店頻度といった指標も把握できるでしょう。

さらに消費者がポイント交換のために、スマポと店舗のポイントカード、たとえばビックカメラのポイントを連携させれば、来店時にスマポのポイントを取得した人のコンバージョン率なども分かるようになります。複

数の店舗別、キャンペーン別にコンバージョン率を比較して、その値が平均より低ければ、店舗内の導線、品ぞろえ、接客など、何らかの要因が悪かったと推測できます。
ECサイト同様の改善手法が可能になります。

いま、ローソン、セブン&アイグループなど流通業がO2Oに積極的に取り組んでいます。
ローソンは、4月末までに全国9000店舗に無線LANサービス「LAWSON Wi-Fi」を導入しようとしています。
ローソンのポイントカード「ポンタ」の会員なら、スマートフォンでインターネットを時間制限なしに無料で利用可能です。
店内限定の無料アニメや音楽なども提供して、アプリを使わせることで、どんな客が来たのかという分析が可能になり、購読者の履歴を調べることができるようになります。

検索サービス「Googleローカルショッピング」では、欲しい商品の在庫がある近くの店舗を探すことができます。

ECの市場規模は約9兆円。
それに対してO2Oの市場規模は約22兆円。

アフィリエイトをオンラインに限定せず、O2Oの領域に進出すれば、大きな市場が待っています。

昨年11月に開催された「楽天テクノロジーカンファレンス2011」で楽天技術研究所の研究者が発表した「Future Directions of Online to Offline(O2O) Commerce and Ubira Project」もO2Oの仕組みです。
たとえばドラッグストアに来た客が店にチェックイン(位置情報登録)した後、店内でスマートフォンを使い、商品のタグをスキャンします。
すると、スマートフォンの画面に表示されるのは、他店のネットショップとの価格比較です。
価格差が大きければネットで買うかもしれません。
このとき、店舗サイドは、チェックイン情報と購買意志が把握できるため、その客にだけ特別割引クーポンを発行できます。
そのクーポンを見たら、その客はその店で購入するかもしれません。

しかし、それでもネットでの購入を選んだ場合でも、リアル店舗には別のメリットがあります。
ネットショップでの購入のきっかけを作ったということで、リアル店舗にはネットショップからアフィリエイト報酬が支払われます。 リアル店舗がアフィリエイターになるかもしれません。
いろいろな変化の可能性があります。

急速に進化するデジタルマーケティング:空恐ろしいほどの進化を遂げるバナー広告

たとえばテレビを見ながら、パソコンをしていたとき、ある飲料メーカーのテレビCMを見たら、パソコンのブラウザにもその飲料メーカーのバナーが出てきました。
これは果たして偶然でしょうか?いいえ、フリークアウト社が提供している「テレビCM連動型広告」による必然です。

そこには3つの技術が用いられています。

ひとつは「オーディエンスターゲティング」。
こういう人に自社の広告を見せたいという希望を実現する技術です。似ているのがアクセス解析の技術で、自社のサイトに来た人が、どんなキーワードでやってきて、どれくらいの頻度で来ていて、どんなコンテンツを見ているかといったことを知ることで、なんとなく、その人の関心事がうかがえる情報を得ることができます。
それをサイトを横断して追跡していく技術が「オーディエンスターゲティング」です。

フリークアウト社は提携先のサーバを使って、いろいろなところに広告を配信して、配信先の行動を追いかけていくことにより、「こういう行動をする人は、テレビをよく見ている」といった傾向をつかんでいます。
そして、そのユーザー層に限定して、さらにCMを放映している「地域」と「時間帯」に集中して広告配信します。
そのユーザーは他のチャンネルを見ているかもしれませんが、かなりの確率で、飲料メーカーのテレビCMを見ている人に同じ飲料メーカーのバナーを見せることができます。

なお、このユーザーの情報は個人情報とは結びついていません。ブラウザ単位で捉えられています。
つまり、同じパソコンの同じブラウザを使っている人が複数いれば、多少はずれるのですが、ブラウザ単位で捉えているため、メールアドレスや名前といった個人情報とは紐づけられていません。

広告を出したい相手と出したい瞬間を特定できたとして、その瞬間の広告掲載の契約はどうするのでしょうか?
たとえばヤフーの右上の広告バナースペースへの掲載には1週間で1250万円かかりますが、このスペースにいつの週に掲載するかは、あらかじめ決めておいて契約します。

かつて兜町で人が指で価格を指定していた株取引が、いまはリアルタイムで取引できる電子取引になっていますが、このヤフーのバナーのような広告契約はいわばかつての株取引のスタイルです。

ここで登場するのが、現在の株取引のようなリアルタイムの市場、アドエクスチェンジという技術と、リアルタイムにオークションを行い、瞬間的に落札した広告を表示するRTB(Real-Time Bidding)という技術です。
アクセスから広告配信までが0.1秒前後しかかかりません。

こういったTVCM連動型配信を実現するための一連のやりとりを一括管理して、その効果を最適化する技術DSP(デマンド・サイド・プラットフォーム)が、実は今後のアフィリエイトにも関わっていくのではないかと思います。

DSPに欠かせないのが、第三者配信です。
これまでの広告はメディア側、たとえばヤフーのバナー広告スペースならヤフーが広告を配信して来ました。
しかし、それではサイトを横断してデータを集めることはできませんし、来訪者に合わせた広告を配信することもできません。
さまざまなメディアへの広告配信を、第三者が一括して行ってこそ、これらは実現できます。
第三者配信によって、一人のユーザーが複数のメディアを見ながら、商品購入に至るまでの過程を把握することができます。

たとえば一人のユーザーが、あるサイトであるメーカーのパソコンの広告バナーを見た翌日、「ノートパソコン」と検索して、検索結果からアフィリエイトサイトに飛んで、そこでノートパソコンの情報を読み、次にメーカーのサイトでスペックをチェックしました。
さらに翌日、ネットを見ていると、そのメーカーのリターゲティング広告(1回サイトに来てくれた人に、もう1回、他の場所で再度広告を表示させる広告)が表示され、それを見たユーザーがメーカーのサイトに行き、購入に至りました。

この場合、今の広告効果の測定の仕組みでは、最後に踏んだリターゲティング広告だけが、成果に結びついた広告として評価されます。

検索連動広告やリターゲティング広告など、買う気になっている人に見せる広告が一番効果があると評価されがちです。
しかしアトリビューション、すなわちコンバージョンに至ったアクションそれぞれの貢献度の分析を行うと、評価は変わってきます。

もし、このノートパソコンの例で、最後のリターゲティング広告が効果が高いからと、そこだけに100%予算を投下したら、ユーザーが最初に見たバナー広告は表示されなくなり、「そういえば、ノートパソコンがほしかったな」という気づきがなくなってしまいます。

いまはまだアフィリエイトがこの仕組みの中に入っていないかと思いますが、そのままだと、本当は真ん中のアフィリエイトサイトが一番購入の後押しをしたのかもしれないのに、評価されません。
いま行われている一連の広告の動きにアフィリエイトも入っていくべきなのではないでしょうか。

急速に進化するデジタルマーケティング:あの有名企業もクチコミサイト

いま大企業も口コミの力の大きさに気づき、自ら口コミサイトに取り組むようになっています。
これはアフィリエイトにとってチャンスにもピンチにもなるかもしれません。

パナソニックはCLUB Panasonicというサイトを持っています。
数百万規模の会員は全員、パナソニックを買ったことがあるユーザーです。
このサイトを通じて作った「みんなのレビュー」というコーナーがあり、パナソニックの数多くの商品の口コミが投稿されています。
「価格.com」などの口コミサイトから誘導されてくるユーザーが多いことに危機感を感じて作られたのではないかとも推測できます。
いまではSEO効果も出ていて、CRM推進室プランニングチームの中村愼一リーダーによれば、「半分以上の(製品の)品番では、検索エンジンの結果が10位以内、『品番 評価』や『品番 レビュー』の検索では、ほぼ全品番が10位以内になる」そうです。

この4月には、遂に資生堂が動き始めます。
まずネット通販に参入。
それも通販専用商品ではなく、主力商品も含めたネット通販です。

そして資生堂自身がアフィリエイトメディア、美容の総合ポータルサイト「Beauty & Co.」(ビューティー・アンド・コー)を始めます。

4月の開設時にはJTB、パナソニック、キッチン用品のル・クルーゼ ジャポンなど20社が集う予定で、2012年12月末には50社の参加を目指しています。
それぞれの企業に誘導した分のお金をもらうビジネスモデルです。

なぜ始めるのでしょうか?
それは商品を買うときの購買行動が昔とは全くちがってきたからです。

かつては資生堂がテレビCMを流し、店舗では情報をたくさん持った販売員が化粧品についてアドバイスするというやりかたでモノが売れていました。
マス広告の力と、店員と顧客の情報格差によって消費に大きな影響を及ぼして来ました。

しかし、ブログとかソーシャルメディア、比較サイトや口コミが台頭してきたことで、顧客が詳しくなってきて、下手すると、店員よりも詳しいことさえ、ままあります。

メーカーとしては、消費行動の主導権を取り戻したいんですね。

アフィリエイトのこれから

杉本氏は「わたしはアフィリエイトが独自に成長して行っていいとは思いません」と言って、3つの「急速に進化するデジタルマーケティング」の話をした意味を語られました。

まずO2Oは、アフィリエイトの市場が大幅に拡大する可能性があるので、これをうまくやれれば、アフィリエイトに明るい未来があるのではないかと思います。

次にDSP(デマンド・サイド・プラットフォーム)によって、バナー広告だけでなく、検索の広告とかソーシャルの広告とか、一括管理して、効果を横断的に測定していこうという動きが広がっているので、アフィリエイトはそこに入るべきなのかどうなのか、考えるときではないでしょうか。

そして最後の話。資生堂がネット通販を始めるくらいですから、ネット通販はもっとすごい勢いで拡大するのではないかという期待があります。

一方、消費におけるアフィリエイトの役割は今後どうなっていくのか?という課題もあります。
杉本氏は「大丈夫なのかな?」と懸念を持ちつつ、長年アフィリエイトを見てきたこともあり、「アフィリエイトの市場がこれからも成長し続け、アフィリエイトがまた注目を浴び、アフィリエイターが尊敬されるように」との願いを持って、3つの提言をなさいました。

1.Challenge 新しいことに挑戦

アフィリエイトは10年前消費者が商品を紹介して収入が得られるという画期的な手法で注目されました。
資生堂でさえ新たな挑戦をする時代なので、アフィリエイトにも新たな挑戦に挑んでほしいという提言です。

2.Cross 媒体、手法を横断した取り組み

アフィリエイトの中で閉じるのではなく、媒体や手法を横断した取り組みに挑んでほしいという提言です。
特に杉本氏が期待されていることは「個人アフィリエイターの価値が再発見されないかなあ」ということ。
先の話にもあったように、消費行動の途中でアフィリエイトサイトが入っているのに、これまでは最後に踏まれた広告だけが評価されて来ました。
他の媒体も入ったマーケティングの仕組みに入っていくことで、消費を喚起するアフィリエイトが再評価されるようになるかもしれません。

3.Clear 立場を明確、明瞭に

最近、一番熱いトピックがやらせ、ステルスマーケティングの問題です。
業界だけの話にとどまらず、食べログの話はテレビでも話題になりました。

また「日経デジタルマーケティング」では、ヤフー知恵袋で業者が自社の良い話を頼んで書かせたり、もしくは代理店が成果を上げるために勝手に書き込んだりして問題になっていることを記事にしています。

また、アメブロでは、芸能人がお金をもらって、商品を推奨する記事を書いて、一度に大勢が書いたことで仕掛けがばれました。
これはアメブロの企業に対するメニューのひとつで、これまでも、メーカーからもらったことを書くように推奨していましたが、問題になったことを受けて、今後は「商品とお金をもらって書いている広告です」と明示することを必須にしました。

アフィリエイトの場合、立ち居地が微妙ですが、杉本氏が、アフィリエイターにやってもらいたいと願っていることが以下の2つです。

ひとつは、公正中立なメディアとしての立場。
すなわち、取り上げる商品やサービスのいいところもあれば、悪いところもある、向く人もいれば向かないひともいるという両面を伝えることが必要です。

もうひとつは販売代理人としての立場。
アフィリエイトは広告というよりも、販売代理人。
「わたしはここの商品がいいと思っているので、アフィリエイトで商品を広めています」という立場を明確にすべきです。

そして常に新規開拓するのではなく、SNSなどのソーシャルメディアも活用して、常連さんを作り、繰り返し買ってもらえるようにしましょう。

杉本氏は「アフィリエイトにはがんばってほしい。そして、それが正しく評価される仕組みを作っていってほしいと思っています」と締めくくりました。

『アフィリエイト・ガラパゴス』 - ネット広告の進化がもたらすアフィリエイトの危機と好機

【第二部】
アフィリエイト・プログラムに関する意識調査 2012

協会 理事 野崎雷太

アフィリエイト利用経験年数

主要ASP各社のアフィリエイト会員へのインターネット調査として実施しました。

ASPごとの回答数ではリンクシェアが最も多く回答766件、次いでエーハチネット746件、バリューコマースが226件、Affiliate-Bが224件、アクセストレードが208件などで、全回答数は2345件でした。

ひと月のアフィリエイトによる収入

「ひと月のアフィリエイトによる収入」で「収入はない」が20%、「1000円未満」が32%、「1000円以上5000円未満」が17%。10万円以上、50万円以上稼いでいる人たちも一定以上います。
アフィリエイトの経験年数と収入状況のクロス集計を見てみると、「1年未満で1000円未満」の方は、これまでどおり70%ていどでした。

母数が増えた関係もあるのかもしれませんが、どの経験年数でも「10万円以上」稼いでいる方の割合が減ってきています。

利用しているASP

「利用しているASP」は「エーハチネット」が72%、以下、「リンクシェア」、「楽天アフィリエイト」、「Amazonアソシエイト」、「バリューコマース」、「アクセストレード」、「トラフィックゲート」…と続いています。

「アフィリエイトの収入状況とASPの利用状況」の相関関係を見ると、「収入はない」人が利用しているASPは主要5社で75%を占めていますが、「100万円以上」の人における主要5社の割合は50%で、収入の多い人ほど、いろいろなASPを使っている傾向が見られます。

ASPに求めるもの

「ASPに求めるもの」は、「管理画面の使いやすさ」、「システムの安定運用」、「魅力的なECサイトの発掘」が三大重要項目として上げられています。

次いで「問い合わせにすばやく対応するサポート体制」、「より良い成果を出すためのアドバイスや情報提供」、「不正クリック、虚偽申込、誇大広告などの不正行為への取り組み」が上げられています。

収入別に見ると、「収入がない」人は、全体と同様、三大重要項目、次ぐ3つの項目が重視されている点は変わりません。

しかし「50万円以上〜100万円未満」の人の場合は、いささか異なってきます。
三大項目は、全体集計よりも、さらに重視されています。
そして、「問い合わせにすばやく対応するサポート体制」もかなり重視されています。

特徴的なのが、「法律(薬事法、景表法等)に関する情報提供」や「ECサイトとの交流の場の提供」を求める割合が多かったことです。

満足度の高いASP

「満足度の高いASP」は上位3位を上げてもらいましたが、「エーハチネット」が頭ひとつ飛びぬけて多かったです。

アフィリエイトの収入状況と満足度の高いASPの相関関係を見ると、「エーハチネット」はどの収入の人においてもあるていど支持されていました。

前回もそうでしたが、「アクセストレード」と「アフィリエイトB」は、収入の多い人に支持される傾向が今回も出ています。
そして「リンクシェア」、「楽天アフィリエイト」、「Amazonアソシエイト」は、収入の低い人からの支持が多い傾向が見られました。

「満足度の高いASP」の1位に上げた理由を自由回答であげてもらったところ、「エーハチネット」を1位に選んだ人があげた理由は、「管理画面の使いやすさ」が圧倒的に多かったです。
次いで「セルフバック」、「サイト登録手続きが簡単」、「広告主・アフィリエイトプログラムが豊富」などが理由として上げられました。

「リンクシェア」を1位に選んだ人があげた理由は、「1円からの振込み」、「振り込み手数料負担」などの支払い条件の良さを指摘する回答が圧倒的に多かったです。
次いで「有名企業・大手企業のEC」、「安心感」、「勉強会」などを上げる回答も多く見られました。

「アクセストレード」を1位に選んだ人があげた理由は、担当者のサポート・親切さ・対応の速さを指摘する回答が非常に多く見られました。
また「アクセストレード・レビュー」という特定のサービス名をあげた回答も多くありました。

「楽天アフィリエイト」を1位に選んだ人があげた理由は、「商品数が多く紹介しやすい」、「楽天市場の利用者が多いため成果に繋がりやすい」という意見が多く、「楽天ポイントでの成果報酬支払い」を評価する声も見られました。

「Amazonアソシエイト」を1位に選んだ人があげた理由は、「商品数が多く紹介しやすい」、「商品リンクの作成が簡単」という回答が多くありました。

「バリューコマース」を1位に選んだ人があげた理由は、「管理画面が使いやすい」、「ECサイトの量の多さや質の高さ」の二大ポイントがほとんどでした。

「アフィリエイトB」は「担当者」というキーワードが突出していて、「親身である」とか「情熱的だ」などの回答が見られました。

スマートフォンについて

スマートフォンを「持っている」が37%、「持っていないが今後持ちたい」が36%でした。

「スマートフォン向けアフィリエイトのサービス利用」に関しては、各社いずれもまだほとんど利用されていないのが実情のようです。

しかし、「まだ利用したことはないが、今後利用してみたい」という人が半数くらいいます。

収入が「50万円以上〜100万円未満」の人の場合は利用実績も意欲も高い傾向が見られました。

「自サイトのスマホ対応」について聞いたところ、「持っている」は19%でしたが、「持ってないが今後持ちたい」が48%あり、今後対応が増えていくかと思われます。

「リンク先ページのスマートフォン対応状況を重要視するか」については、「重視している」が11%、「やや重視している」が20%、合わせて31%であるのに対して、「あまり重要視していない」が18%、「全く重要視していない」が24%、合わせて42%と、まだ多くの人はECサイトのスマホ対応を重視していないようです。

ソーシャルサービスについて

「利用しているソーシャルサービス」はTwitter、Facebook、mixiが多く、Google+の利用はいまいちのようです。

「ソーシャルサービス利用目的」は、「友人・知人との交流」、「情報収集の手段として」、「ソーシャルサービスは利用していない」が多く、まだ収益に結びつく形での利用は少ないことが明らかになっています。
とはいえ「アフィリエイトサイトへの集客手段として」と答えた方もあるていどいました。
「主要な収益手段として」とまで答えられた方はまだほとんどいませんでした。

その他

「日本語以外の言語に対応するアフィリエイトサイトを作っていますか?」に対しては、「いいえ」が95%、「はい」が5%でした。

「2012年に最もアフィリエイト広告を掲載したいと思う企業・サービスは?」に対して、個別の名称を上げた中で圧倒的に多かったのが「ユニクロ」でした。
次いで「楽天市場」、「無印良品」でした。
「ユニクロ」に関してはまだ個人向けには解放されていないということで、個人でも提携できるようにしてほしいという意見が非常に多く見られました。

業種に関しては美容、健康、旅行、ゲーム、ファッション、教育、ペット、金融、エコ、電子書籍、資格などのキーワードが多く見られました。

最後に「2012年、アフィリエイト業界がさらに発展するための提言を一言で」と聞いたところ、ECに対しては「成果の出やすいページ作り」や「承認に関するデータの開示」、「広告主の不正を排除してほしい」、「有名企業にもっと参入してほしい」、「ECサイトの育成(アフィリエイトに関する知識をもっと身につけてほしい)」などの意見が多く見られました。

「スマートフォン対応」に関しては、「自身のサイトの対応」、「スマホ用広告の活用」など自サイトの対応があげられました。

「ASP」に対しては「報酬率、報酬額のアップ」、「売上アップのための情報」や「SEO」に関する情報提供、地方イベントの開催などを求めています。

「自身のサイト」に関しては、「ユーザー目線」、「個性のある」、「正直なうそのない」、「訪問者の役に立つ」サイトをもっとしっかり作っていかなければ…という声が多く見られました。

「信頼性」に関しては、「詐欺的・不正な情報商材の排除」、ECサイトやアフィリエイト業界全体の信頼性、ひるがえって「自分が発信する情報」の信頼性を高めていかなければ…という声もあげられました。

『アフィリエイト・プログラムに関する意識調査2012』 ama 理事 野崎雷太

【第二部】
アフィリエイトASPパネルディスカッション

≪パネラー≫

日経デジタル・マーケティング 副編集長 杉本 昭彦 様

株式会社インタースペース(アクセストレード)
広告事業本部 ADマーケティング部
マネージャー 高橋 正浩氏

バリューコマース株式会社
経営企画部長 木村 康夫氏

株式会社ファンコミュニケーションズ
A8事業部長 吉永 敬氏

株式会社フォーイット
アフィリエイトB
第1アカウントグループ リーダー 星川 勝義 氏

リンクシェア・ジャパン株式会社
マーケティングソリューション部
部長 高橋 俊仁氏

≪モデレータ≫

協会 理事長 柴田 健一

ASP各社をパネラーに、アフィリエイトの現状、今後についておたずねして、おおむね紙に書いて掲げていただき、その後、詳しく話をしていただくスタイルで進められました。
公開できる一部回答をご紹介します。

Q: 調査結果をみて一言

アフィリエイトB星川氏は「GBM」の紙を掲げ、「がんばります」。

アクセストレードの高橋氏は「喜+成長」。
担当者のサポートへの高い評価に喜びつつ、「アフィリエイトBと評価がかぶっているところが多いので、アフィリエイトBの追随を許さないようがんばりたい」とも。

日経デジタル・マーケティング杉本氏が紙に書いたのは「スマホ19%」。
19%もスマホサイトを用意していることに驚きの声を上げられました。

バリューコマースの木村氏は「意外」。
管理画面がウイークポイントだと思っているのに、支持する理由として「管理画面が使いやすい」ことが上げられたことを意外だと感じられたようです。

ファンコミュニケーションズの吉永氏は「嬉」。
高い評価を喜びつつ、もっとよくできるはずだと、いっそうの努力を誓われました。

リンクシェアの高橋氏は「くやしい」。
アメリカのリンクシェアは、これまでの1位だった競合を抜いて1位になったとのことで、日本は逆に差を開けられたことを悔しく感じ、管理画面の遅さの解消、特にレポートをより良くしていきたいと決意表明されました。

Q:スマホはどうなのか?

具体的にいくつかの分野をあげて、スマホ経由の売上が伸びていることが語られました。
それもかなり急激な伸びで、ジャンルによってはPCを遠からず抜きそうです。
漫画王国、めちゃこみなど

Q:ソーシャルアフィリエイトは?

自分が儲けるために、友達にすすめることの問題性が指摘されつつ、今後、形はどうあれ、活用していくべきものという点は一致していました。

Q:杉本さんからASPへ「チャレンジしてほしいが、アフィリエイト業界で新しいものは生まれていますか?」

リンクシェアでは講演にあったオーディエンスターゲティング、リターゲティングに取り組もうとしていることが話されました。

Q: SEOが難しくなり、個人が厳しい状況になってきていないか?

個人は資金力、リソースの点で厳しい面もあるが、ワードの多様化が進んでいるので、独自の切り口を見つけることで、まだまだSEOで勝てるという声が出ました。

キーワードによっては、3ページ、4ページまで見られることがあるとのことでした。
そして、価値あるコンテンツを提供し続けている方はSEOでも地道に伸びているそうです。

Q:去年大きく伸ばしたものは?

「独自コンテンツ」、「激安や特価などに特化したサイト」、「スマホ アプリ」などのキーワードが出ました。

Q:アフィリエイトのイメージ

アフィリエイトが怪しいものといったイメージの悪化を上げる声と、話題が減ったのは日常に定着したからであり、イメージは悪くないという声がありました。
都市部と地方のちがいもあるようです。

閉会の挨拶
協会 理事長 柴田 健一

アフィリエイトマーケティング協会への要望をサイトなどから寄せていただきたいと語り、足元の悪い中、参加いただいた皆様に感謝して、締めの言葉としました。

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